お見合いの話をしながらも、俯きがちなSさんに、どうしても聞きたいことがあった。どうしてそんなに結婚、したいんですか? 「どうしてって……。そうですね。だってそれが当たり前だと思ってましたから。まさかこの年まで自分が結婚できないなんて、20代前半の頃は思ってもみなかったんです。付き合っている彼がいない時だって、結婚できないかも、なんて思ってもみなかった。それが、あっという間に29歳になってしまって、思ったんです。今まで生きてきてプロポーズされたこともなかったのに、それが突然、結婚できるわけないって。だからお見合いしてるんです……」。結婚するのは当たり前。本当にそうなんだろうか。とてもそうは思えないけれど、最後にSさんが言った言葉が胸に残った。「ずーっと普通に生きてきたんです。結婚だって、普通にできると思ってた。なのにこの年になって『普通』に結婚することがこんなに大変だなんて。自分が結婚できないことになるかも知れないなんて本当に思ってもみなかった」。結婚相手に望むことはただひとつ、「家庭的な人」。「相手が現われないかもしれない」。Sさんは今、その不安と毎日戦っている。「不安です。一生ひとりかもしれない、結婚できないかもしれない。そう思うと大げさじゃなくて夜も眠れない時があります」。ひとつだけ願いが叶うなら「結婚相手を見つけて欲しい」。真剣な目で、彼女は言った。