授業の後にひとりの生徒が俺のところにサインをもらいにきた。そうなるといつものことで、俺も私もと、生徒達の列ができてしまう。そこには質問がある生徒もいる。俺は生徒の質問には少しでも答えてあげたいし、サインも書いてあげたい。それから津田沼校には、二学期までまたしばらく来られないということもあったから、ここはひとまず京都行きの新幹線の時間を変更することにした。JR津田沼駅は代ゼミの校舎から目と鼻の先だ。「悪いけど、みどりの窓口にいって、これ変更してきてくれる?何時でも構わないけど、6時過ぎがいいかな」俺は間違えがないように、代ゼミの職員にメモまで書いて渡した。『6時〜津→京』これで何も問題はないはずだった。しばらくするとその職員が帰ってきて、こう言った。「先生、変更してきました」「ありがとう。急に悪かったね」「いいえ、……じゃあ、これお釣りです」俺は耳を疑った。俺は時間を変えただけだ。お釣りがあるわけがない。「え?お釣り?なんのお釣り……?」きょとんとしている職員の顔を見ながら、俺は一瞬で様々な理由を考えたが、お釣りがある理由なんてひとつも思い浮かばない。俺はわけもわからないまま、チケットをよく確かめてみた。すると驚いた。乗車券が津(三重県)からになっていた。「……キミ、なんで、津なの?」「はあ?」その代ゼミの職員は、さわやかに「でも、メモ通りですよ」と答えた。俺はあまりに驚いて、その次に一体何から問いただせばいいのか質問の順番がわからなくなった。それでも、それがめちゃくちゃバカな質問だと感じながらも、俺はこう聞くしかなかった。「じゃあさ、……俺はここから津までどうやって行くんだよ?」そいつは、はあ、さあ、という顔をした。考えてみろよ。ここは津田沼だろ?で、津田沼で津といったら津田沼であって津じゃないだろ?言っておくけど、その職員だって立派な大学を卒業したヤツなんだ。なのにあまりもその場の判断力、応用力がなさ過ぎる。相手がパソコンだったら俺が謝る。それならまあわかるよ。パソコンだったら津は津だよ。でもお前はパソコンか?もちろん人間はパソコンじゃないよな?お前は代ゼミの職員であって、しかもここは津田沼校だよな?だったらさあ。この津は津じゃないだろ。