「肌によい」とは

2011-02-02

「肌によい○○が大ブーム」という言葉をあちこちで目にするが、「肌によい」という言葉の使われ方に、なんとも安直さを感じるのは私だけだろうか。食べ物、お茶、肌に塗るもの、入浴法等々、無数の美容法が「肌によい」としてマスコミで紹介されるが、なぜこんなにたくさんあるのか、また本当に肌によいならば、どうしてこうも流行っては消えていくのか。医学的に「肌によい」ということを実証しようとしたらどうなるか。最低でも20〜30人のモニターをとらなければデータとはみなされない(信頼できるデータと呼ぶには本当は200人くらい必要である)。20人の女性にその美容法を3ヶ月くらい、場合によっては1年、2年と試してもらって、肌がどう変わるかを解析する。なぜそれだけ必要なのか。それは、5人や10人では信用できないからである。例えば10人の女性が、ある食品を摂取して、そのうち7人の肌がよくなったとしよう。これはかなり肌によい食材だ、というふうに受け取れる。でも、20人で同じ実験をすると今度は肌がよくなったのは半分以下の8人だった、ということが起こりうる。10以下というのはそういうことが起こりうる数字なのである。20になると、このような逆転現象は起こりにくくなり、200になればほとんど起こらなくなる。つまりある程度信用に値する数字になる、というのが科学的通説である。テレビの実験などで、「この美容法を3人で2週間試しました」などというものを見ていると、なんとも複雑な気がする。それはそれで、「お茶の間美容」だから、医学とは違つてもかまわない、という考え方ももちろんあるが、それにしては、マスコミの影響はなんとも大きい(テレビで紹介された食材が翌日スーパーから売り切れるのは、ご存じのとおりである)。もっと不思議なのは、「○○さんは、これを10年間毎日食べているそうです。どうです、お肌きれいですよね〜」というやつである。その人の肌がきれいなことと、その食べ物が関係するという根拠はどこにもない。例えばここに、背が高くてナイスバディのアメリカ人の女性がいる。彼女が子供のときから毎日とっているものといえばココアである。ではココアを飲めばみなさんも、胸が大きく脚が長くなるのだろうか?ここに肌も髪も美しいイタリア人女性がいる。彼女のランチは毎日サラミのピザである。みなさんは、真似てみる気がするだろうか?「肌によい」という安直なフレーズの落とし穴が、おわかりいただけただろうか。お茶の間美容は、楽しみとして見る分には、それはそれでよいのかもしれない。でも、医学的、科学的に効果の実証されたものとそうでないものとは、はっきり分けて考えるべきである。「テレビでシミに効くっていっていた食べ物」と、皮膚科学会や香粧品学会でシミに有効であると認められた成分とを、同類のものと考えるのは危険であるということである。それは例えば、テレビで「お茶にはガンを予防する作用があります」と言っていた、というのと、国立がんセンターで使われている抗ガン剤を同等に考えるようなものなのである。でも実際、患者さんの中には、医者の言うことよりテレビ等を信じる人がかなりいる。「あなたのシミにはこういう成分がよいから……」といくら医者が言っても、お茶の間美容の方を優先したがる人は多い。それは、抗ガン剤を勧める医者の言葉に耳を貸さず、ガンに効くお茶に固執しているのと同じである。シミはガンではないからよいかもしれないが、ある程度進行すると治せないのはガンと同じであるから、後悔しないように気をつけたいものである。巷に氾濫する、「○○によい」という言葉に飛びつく前に、その根拠をよく見てみよう。どの程度のデータがあるのか、学会レベルで承認されているのか、それが重要である。「肌は内臓を映す鏡」という言葉がある。体の中の小さな不調もすべて肌に表れるという意味だが、私はこれに「心」を加えて、「肌は内臓と心を映す鏡」としたい。ストレスも肌をむしばむからである。当院が美容皮膚科の治療に漢方を積極的に導入している理由はここにある。心と体の内面からのケアが美肌のためには不可欠であるのを、女性たちの肌を見ていて実感するからである。もちろん西洋医学的治療もあるが、漢方のよいところは、特に病名のつかないような体調不調も治せるという点てある。胃炎というほどでもない胃もたれ感や、婦人科に行くほどでもない生理不順や生理痛、睡眠薬を使うほどでもない軽い不眠などを、漢方は治していってくれる。一見肌と直接関係ないようなこれらの症状を改善することで、ニキビが治ったり肌が丈夫になったりした例をたくさん見てきている。

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