一九五六年(昭31)に日本住宅公団が分譲した宇田川住宅は、いまはない。鉄筋五階建て、総戸数九〇戸、全戸2DK、専有面積約四七?というのが概要だが、築後十七年を経た七三年(昭48)に住民の意思によって取り壊され、二年後の七五年(昭50)に建て替えられたのである。現在建っているのは、鉄骨鉄筋コンクリート造で地下一階地上十四階建ての渋谷ホームズだ。総戸数二七〇戸、間取りは専有面積が一八・五?のワンルームタイプから一三六?の3LDKまでと、バラエティーに富んだ構成になっている。日本での分譲マンションの建て替えはこれが初めてといわれ、紆余曲折はあったが結果的に成功した事例として、長く参考にされてきた。それにしてもわずか築十七年という短命に終わってしまったのはどういうわけか。宇田川住宅は入居後十二年目に早くも建て替えの声が上がり、再開発委員会が発足している。建て替え理由は、建物に対する苦情も多少あったようだが、「建物が傷んでもう住めない」といった切迫した事情からではなかった。反対した人たちのなかに「建て替えが必要なほど傷んでいない」という意見が多かったことからも、それは推測できる。